中島千波画伯 制作の大ふすま 『春輝枝垂櫻』

「桜といえば」と評される日本画家、中島千波。画伯によって、当山本堂正面その両脇、金地のふすま四面に満開の枝垂れ桜が描かれました。当山住職が、その喜びと感謝の思いをインタビューにこたえる中、語っています。(2008年8月27日万福寺にて)

千波先生は2008年夏に完成したばかりのお寺を訪ねになられました。本堂正面には、ご本尊である阿弥陀如来像が安置されている黄金色の宮殿と、その下には極彩色の彫刻が施された巨大な須弥壇があり、その手前の左右を襖絵が飾ります。数百年前のご本尊と大正11年(1922)に作られた宮殿と須弥壇、そして新しい本堂との調和を考えていらっしゃるのか、千波先生は本堂んい座りながら、じっとその空間を見つめておられたのが印象的でした。

 

先生と襖に描かれるテーマについてお話をしていた折に、自然と「桜」の話になりました。先生が「桜と浄土真宗にはなにか由縁があるのですか」とお尋ねになり、私は浄土真宗の宗祖・親鸞聖人の伝説を思い出しました。9歳の聖人がある夜に得度を和尚に願い出たところ、和尚が今日は遅いから明朝にしてはどうかと言うと、聖人が「明日ありと思う心の仇桜、夜半に嵐の吹かぬものかは」と応えたという歌を紹介しましたところ、「それhいいね」と先生がおっしゃり「桜」に決まりました。息子も千波先生には是非桜を描いていただきたいと願っていたので、本当に嬉しいこととなりました。それからは千波先生のお仕事の早さに驚かされながら、20096月に襖絵完成のお知らせをいただいたのでした。

 

 

千波先生の枝垂れ櫻の襖絵が奉納されましてから、門徒の皆さん、法事が終わっても絵に見とれて、なかなかお帰りになりません。まるで絵から現れる桜の精に心を癒してもらっているかのように、幸せそうな顔をして絵の前に座っています。素晴しいことだと思います。

 

万福寺は開かれたお寺であることを願い、千波先生の襖絵を多くの皆さんに見ていただきたいと思っています。息子も僧侶として、寺で音楽コンサートを開催するなど新しい試みに取り組んでいます。風光明媚なこの地に是非お出かけいただき、千波先生の桜で心を癒していただければと思います(住職談)

『中島千波 彩図鑑Ⅲ(求龍堂)』掲載インタビューから引用

 

 

中島千波:1945年長野県小布施町に生まれる。東京藝術大学卒業後、院展を中心に出品。1979年山種美術館賞展・優秀賞受賞されるなど、若くして高い評価を受ける。2013年東京藝術大学教授を退官。出身地小布施町におぶせミュージアム・中島千波館がある。